解説詳細

TGF治療

難治性気胸には2種類あり、治療にも関わらず頻回に気胸を再発してしまう場合と持続的に空気が漏れていてどのような治療をしても止まらない場合の気胸があります。TGF治療は後者の難治性気胸に対して有効な方法です。TGFとはThoracographic Fibrin Glue Sealing Methodの略語で、胸腔造影下フィブリンのり閉鎖法、が日本語名称になります。簡単に説明すると、胸腔造影によって空気漏れの部位を正確に判定します。その場所を標的に、胸腔ドレーンから細いチューブを挿入して空気漏れの部位まで誘導します。そこにフィブリンのりを滴下して止めるという方法です。これは非侵襲的治療といって、手術のような体に負担をおよぼす治療法ではありません。以下に、順を追って説明します。

(1) 胸腔造影検査

持続的な空気漏れが続く気胸では、まずどこから空気が漏れているかを調べることが重要です。これを発見できる方法は、現在のところ胸腔造影しかありません。胸腔内に造影剤を注入し、X線透視下で空気漏れの部位を探す方法です。体をいろいろな角度に傾けて探します(図1、図2)。

図1 胸腔造影
空気漏れの部位を明確に確認できます
泡が出ているところが空気漏れの部位です。
図2 胸腔造影検査の様子
X線透視台で体の向きを様々に傾けて空気もれの部位を探します。

(2) フィブリンのりによる閉鎖

明確な空気漏れ部位を確定できた後に、胸腔ドレーンからdouble lumenのカテーテルを空気漏れの部位まで誘導して、そこでフィブリンのりを滴下して空気の漏れを止めます(図3、図4)。カテーテルは癒着のない部位を探りながらゆっくりとすすめていきます(図5)。COPDによる難治性気漏、胸部手術の術後難治性気漏、合併症のため手術を避けたいような難治性気漏には効果的です。その手技の動画はinternetでも見ることが出来ます。治療が上手くゆけばその場で空気漏れが止まるのを確認できます。減少傾向があれば数日で止まる可能性があります。図6はフィブリンのりが完全に空気もれの部位を閉鎖している写真です。TGFは現在のところ一部の施設だけしか出来ませんが、次第に広がってゆくと考えられます。

図3 胸腔ドレーン
胸腔ドレーンからカテーテルを挿入している
図4 モニターを見ながらカテーテル操作をしている。
図5 カテーテル操作
カテーテルが癒着のない部位を進みながら空気漏れの部位まで到達している。
図6 肺尖部に造影剤と混合されたフィブリンのりが停滞している。

動画はインターネットサイト CSLsurgery.com で見ることが出来ます。
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